常連さんが腰を痛がり、良くならないので診て欲しいという。調べたら右の仙腸関節炎(ぎっくり腰)で、まずは鍼を打って様子を診た。そうしたら打った後の方が痛がる。これはおかしいと思い、ぎっくり腰の定番治療、①脚の治療②お腹の治療③さらしなどでの固定を全て試したが全く効果がないという。これは明らかにおかしい。脚を治療しながらスタマックラインの反応があったので、「食べすぎ?ストレス?」と聞いたら、ある投薬の副作用で食欲が止まらなくなってしまったという。これでは腰に負担がかかる。その上、最近片手で重い物を持つことが多いという。これも腰に負担がかかる。しかしこの程度なら①②③の治療で痛みが楽になるはずである。ならないのは相当我慢したか、他の要因がある。話を聞いたら、「仕事が休めないので、坐薬で誤魔化した。」と言う。この坐薬で理由が分かった。「おそらく坐薬を使って楽になり、仕事は出来たでしょうが、段々効かなくなったのでは?」と聞いたら、「そうなんです。それで来ました。」と言う。「実はそれはやってはいけないことで、10の痛みが坐薬で5になる。本来は安静を保つべきなのに、負担をかけると次の日には15の痛みになってしまう。その痛みを坐薬で減らしても、翌日には20になってしまう。仕事が休めないのは分かりますが、仙腸関節の炎症のレベルがどんどん上がったと思います。もうこうなるとペインの医者に注射を打って戴きまずは鎮痛。そのあとの我々のリハビリです。」と伝え、先日、私自身がお世話になったみつはたペインクリニックを紹介した。この先生は順天堂の先生でペインと漢方薬の名医である。当院からも患者がお世話になっている。こういうケースは中々ないが、我々は、「仙腸関節は甘く見ない方がいい。慢性化すると大変なことになる。」という感覚を持っている。坐薬を入れて本来は安静なのに、痛みが楽だからそこの炎症を拡げてしまった結果である。結果治癒までは長引いてしまう。整形の先生でも中々この仙腸関節の専門家は少ない。重い物を持って腰の筋肉が硬くなったのとは全く違う病態である。
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