股関節人工関節について

昨年度から急に股関節の患者が増えた。私自身が股関節に特化した専門家ではないので、知り合いの先生を紹介し、そのうち4人が人工関節の手術を受けた。以前から、股関節の術後は殆ど患者が来ないので、リハビリに関してのブログが殆どない。酷い方になると股関節人工関節の術後、別件でおみえになった方に、「もうどれくらい経ちますか?」と聞くと、「何が?」「え、手術ですよ。」「あ、それね。半年かしら?」と答える。それぐらい股関節の手術は成績が良い。股関節の患者が増えるに従い、こちらも段々勉強して、専門医と懇意になったある日、「手術の見学に来られますか」と言って頂き、先日、当院の患者の手術を見学させて頂いた。昔は股関節の手術は3-4時間かかった記憶があるが、今は麻酔がかかっていれば1時間で終わってしまう。実に手慣れていて安心できる。昔の素材では8-15年と言っていたが、今は30-40年、場合によっては100年もつという。これは偶然発見したチタンのお陰である。関節にはチタン合金やセラミック、超高分子ポリエチレンや陶器を組み合わせたものを使うが、流石に100年はもたなくてもいいと思ってしまう。大体手術するのが50代以降だから、30年で十分である。これは以前教えて戴いた事だが、20世紀医学の最大発明の1つは「股関節人工関節」だそうだ。もう一つは「心臓のバイバス術」である。以前天皇陛下も手術を受けられたが、その後調子が悪いという話は聞かない。それくらい素晴らしい手術である。だから術後、当院に来ない訳である。しかしこういう話をすると、「では腰も膝も同じ成績ですよね」と言われてしまう。患者さんから見ると、腰も股関節も膝も場所が違うだけで、悪くなれば人工関節に代えればいいと感じてしまうだろうが、実際はそうはいかない。脊柱管狭窄症などで腰の手術の場合、術後通われている方や再手術は多いし、膝を人工関節にしても痛みを訴える方は多い。私も2年前に脊柱管狭窄症を患ったが、専門病院の先生は手術やる気満々だったが、いろいろな先生に指導を頂き、信頼している先生は全員、「出来るなら開けない方がいい。」と同じ事を言った。だから手術という選択はしなかった。ある意味、股関節だけずば抜けて成績が良い。だから予防で手術をした方もいるほどである。中々こういう感覚は医療関係者じゃないと持っていないと思うが、これは事実である。だから患者さんには、「股関節なら専門医に診てもらい今後良くなる可能性が低いのなら人工関節を考えなさい。しかし脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなら半年は様子を見て粘りなさい。膝の場合も手術をしなければならないケースは当然あるが、色々と試して駄目な場合にしなさい。」とアドバイスをしている。手術も場所毎に全く成績が違うことは知っていて欲しい。

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