仕事が駆け出しの頃は実力も信用もなく、良かれと思っていたアドバイスも中々聞いてもらえない時期が長かった。
少し経験を積んで仕事で紹介が出るようになると、我々の一言で人が動く。
難しい病気の方なら専門の医者を紹介すると九州でも飛んでいく。
段々とこちらの一言が重くなってきて、言葉を選ぶようになる。
ライオンタイプの元気な方ならいいが、小鳥タイプの方は自分の症状を診てもらうのに何処に行って何をしたらいいか分からないから、相談の時間も長く通院回数も多くなる。
症状は一つではないから、婦人科のあとは耳鼻科、歯科も同時受診、それが終わったら心療内科などと順番も指導する。
通っているうちにこちらも色々な話をするので、段々医学知識も増え、自分の病気だけでは物足らず、家族や親戚、友人などの症状を聞き、にわか医者になる人も多い。
「腰痛はそんな治療じゃだめ。まずお腹から治さないと、乳酸菌を飲みなさい。」
我々がいつも言っていることを人様にもしゃべる。
まさに門前の小僧である。
そんな患者さんを見ていると、病気をしたことによって運命が変わったなぁと感じることがある。
自分の症状のみならず他人の病気にまで関心を持ち、健康法を追いかける。
熱心な方は健康指導員になって他人の面倒を見ている。
そうなると頭の中は自分が抱えている患者さんをどうするかで一杯で、自分の症状など考えている暇はない。
ここまでくると治療家と同じである。
結局自分の症状を何とかしようとして他人のことまでかかわってしまう。
少し大げさに言うと運命開拓である。
この仕事をするとわかるが、いかに自分のことだけ考えて生きるのが楽なことか。
今まで自分の症状で精一杯だった小鳥タイプの方で、何人かは他人の病気まで手を出している方がいる。
皆、溌剌としている。