鍋を洗うと再発する鬱病

最近、鬱病の患者さんが急増している。低年齢化しているのも1つの特徴である。当院は専門が鍼灸や代替医療だから、特別にカウンセリングや精神療法・投薬をするわけではないが、それでも鍼灸で何とかなればという切実な想いであろう。10年ほど前の鬱病は、「ちょっと精神的に・・・」と小声で言っていたが、最近は「僕は鬱です。宜しくお願いいたします。」と元気に院内に入ってくるのを見ると、時代かなぁと感じる。なかなか通院だけで治癒しないケースは入院となるが、一時退院時に大事な注意事項がある。特に女性の場合、鍋を洗わず、礼状を書かないことである。几帳面な方ほど鬱病になりやすいが、女性が家を空けて、久しぶりの台所で汚れが気になるのはわかる。そして義理堅い方は礼状を書くだろう。そうなったら再入院は近い。理由はこうだ。一時退院といっても身体が元に戻っているわけではない。それを自覚しないで几帳面な性格ゆえに、今までの分を取り戻そうと必死に鍋を洗う。それも2つも3つも・・・。知らぬ間に鍋は綺麗になるが右手で洗えば右腕が想像を絶するほど硬くなっている。そしてお世話になった人達に礼状を何十通も書く。しかし困ったことにこの腕のこりは自覚症状が出ない。知らぬ間に肩こり、首のゆがみ、頭痛、頭の血行不良が連鎖的に起こり、眠れないので薬を飲むが効かない。焦って抗不安薬を飲んでもよく効かない。そんなことが続けば又入院は近い。病院で退院時に、「鍋を洗うことに気をつけて。」とは言ってくれないから、何でも出来ると思って再出発の決意で家事をする。ここが落とし穴。我々みたいに全身の身体を診ていると、病み上がりではほとんどの方が肉体的精神的にまだ本調子ではない。当院ではそんな経験をよくしているから、退院時には、「汚れが目立つ鍋は今は見て見ぬ振りをするか新しいのを買った方がいい。礼状は元気になったら書いて、本調子じゃないときは電話で礼を言うといい。まだ体力が半分ぐらいしか回復していないと思いなさい。」と鍋と礼状を禁止している。

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