飲食関係の方が膝を痛めたという。当院との予約時間が合わず、中々治療できない。仕事も休めないので、仕方がないから通える範囲でよその治療院で診てもらうといいという話をした。よそで治療を受けた後に来て、「内転筋を揉んでもらったら膝痛が酷くなってしまった。」という。担当した先生は、「あなたは内転筋が硬いからほぐさないと良くならない。」と言って、ガンガン揉んだという。その後から酷くなって、慌ててやってきた。「どうしてこういう事が起こるのですか?」と聞かれたので膝を見て、「確かに出ている症状は内転筋に問題があることはまちがいない。しかし揉んでいい人と揉んではいけない人がいる。あなたの場合は揉んで悪化するので、僕は一切触らなかったでしょう。」と言ったら、唸ってしまった。「ではどういう人は揉んでよくてどういう人はダメなのですか?」と聞いてきたので、「それは経験値としか言いようがない。僕も20年ぐらい前はよく揉んでいて、患者さんから苦情をもらった。ぎっくり腰の方に鍼をして全く動けなくなってしまったこともある。顔面神経麻痺の治療をしたときも失敗して悪化してしまった。それ以来ウィルスや感染の勉強をして、患部を触らない方法を考え、今の治療法が出来上がった。失敗して学ぶしかない。」「もうあそこには行きたくないのですが・・・。」「気持ちは分かるが行って欲しい。そして担当した先生にこうなりましたと言って欲しい。そうすると治療家も反省して色々な方法を考える。あなたは大変かも知れないが、そういう情報を貰えないことが困る。世の中のためと思って、先生に文句を言ってもらいたい。」「・・・・・・・・。」治療は人間のやることなので、失敗をゼロには出来ない。しかし経験と智恵と人を育てる気持ちで少しずつ立派な治療家が出来上がっていく。是非、いい治療を受けたときは褒めて、良くなかったときは、「全然効かないどころか悪化した。」と言って欲しい。