鬱病と逆流性食道炎

年配の常連さんが最近精神的におかしいという。
今まで十数年診てきてそんな事を言ったことは1度もないのに、何故か胸がザワザワしてまるで自分ではないみたいな感じがすると言う。
仕事柄、鬱病はよく診るので、先ずは心療内科で薬をもらいなさいと指導をした。
残念ながら薬の効果がなく、胸のザワザワは治まらないという。
本人にすれば薬までもらって良くならないのは余程悪いと感じたらしく、毎回不安ばかりを口にする。
こういう場合は不安材料を消すために、「いい機会だから胸の写真、心電図、胃カメラ、できれはCTまで全部診てもらって下さい。そこから考えましょう。」と言って、調べてもらったら、軽い逆流性食道炎以外は何もなく、薬もいらないレベルだと言われたという。
こうなると、「じゃ、胸のザワザワは逆流性食道炎でしたね。薬も出ないぐらいなんだから、少し食べすぎや刺激物など気をつけるだけでいいですね。これだけ調べて何も出ないというのは後は脳を調べるしかありません。心配なら調べれば良いですが、おそらく何も出ないでしよう。」と伝えたら、「普段のドック以上に調べて何もないというのは本当に安心しました。調べてもらってから何故か精神状態が良くなっているのです。もう峠は越えた感じです。」と言う。患者の悩みの多くは「未知」である。人は具合が悪いから不安になるのではなく、何か分からないから不安になるのである。人は年をとると医者なしでは生きていけない。病名をつけて頂くだけでも立派な治療である。

image_print印刷する