「先生にすべてお任せします」は考えもの

よく手術の場面で、「先生、すべてお任せします。」と患者が言っているが、私はこれは少し問題があると思っている。以前もある尺骨神経麻痺の患者が、手術をしたが全く良くならず医者に問いただしたら、「手術は成功しました」の一点張りでそれ以上話が進まない。患者にすれば、手術をすれば治ると思っていたが、医者にしてみたら、やるべき事はすべてやって手術は成功した、あと麻痺が治るかどうかは患者の力と思っている。このすれ違いは大きい。手術前に、「今回の手術でどうなるのでしょうか?」と聞けば、「2割ぐらいが完治で、4割が多少改善、4割程度は全く変化しません。」と言われれば、患者にも選択肢はある。しかし先生にすべてお任せとなれば、「お願いします」しか患者は言わない。医者にしてみたら、難しいことを患者に言っても理解してもらえないと思っているし、患者も難しい話をされても分からないと思っている。解決法は医者がわかりやすく言うか、患者が学ぶかである。私は仕事柄、寺子屋みたいに患者教育をしているが、患者が学ばないのは問題があるとおもっている。患者は「そんな難しい医学などわかるわけない」と思っているだろうが、基礎が少し分かれば医学は決して難しくない。うちの患者を見ていても数年学ぶと皆、にわか医者になっている。自分に症状がないものだから病人を見つけては、「糖尿病はそんな治療ではダメ。牛乳は良くない、乳酸菌を飲みなさい。」などと指導している。答えられなくなるとすぐにうちに飛んできて、答えを聞いてすぐに帰る。家に帰り友達に伝えるのであろう。少しずつではあるが、血液のデータも読める患者が増えてきた。「CRPが下がったので炎症が少しいいという事ですね」「貧血が改善していますね」のように医者と会話をして頂きたい。そういう会話がないと医者も、「心配ありません」しか言えない。「今回、腎機能はどうですか?」ぐらいは聞いて頂きたいと思う。少しの学びでより自分の身体が理解出来る。

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