症例

老いと寺子屋

最近仕事をしていてつくづく思うことは、「自分のやっていることは寺子屋だなぁ。」ということである。 何を教えているかと言えば、「老い」である。 長いこと仕事をしてきてわかったことは、「人の老いは皆同じパターン」ということである。 20歳までの成長期は殆ど病気もせず元気でいいが、33歳ぐらいから明確に身体は変化し始める。 まず問題なのが体重増加、酷い方だと20歳より15kg増える。 そうなると坐骨神経…

忘れていた小麦アレルギー

数年前に胃炎が全く治らず調べてもわからなかった方が、ようやく小麦アレルギーとわかり一件落着した。数年してから外国でちょっとした食事の中に小麦が入っていて高熱と共に具合が悪くなった。こういうケースもあるので先生に処方して戴いて抗アレルギー剤をいつも持っていた。今回、イタリア旅行で何かお祭りがあったらしく頂いた物の中に小麦が入っていた。イタリアでの全食事は日本から白米持参だったのに、ちょっとした油断で…

鬱病と思想

男性の鬱病患者で何とか現状を打開しようといろいろな本を読み、ある特定の思想にはまる方が時々いる。「今の日本はダメで、○○主義、思想を目指すべきだ。」「自分がこういう状態になったのは○○体制のせいである。時代の被害者である。」思想自体をどうこう言うつもりはないが、その方の現状を見ていると、親に世話になっていたり、奥さんが働いていたりととても自立しているとは思えない。「今の政治を変えなければならない。…

ウェラー・ザン・ウェル

Weller Than Wellとは誰言うとなく伝えられてきた言葉で、直訳すれば、「健康なときより、いっそう健康」という意味である。 元NHKでがん患者の川竹文夫さんがNPO法人ガンの患者学研究所を立ち上げた。 そして川竹さんがこの言葉を次の様に解釈すると言っている。 「自助努力によってガンを治した人は、ガンになる以前にも増して、心身共に、はるかに健康で幸せな人生を送ることができる」 この患者会は…

「一切れのパン」と心のよりどころ

たしか中学校の国語の教科書に「一切れのパン」という話が載っていた。 第二次世界大戦中、ハンガリーの首都ブダペストで主人公は二十歳くらいのルーマニア人男性。彼には妻がいて、ドナウ川を往来する船で働いている。国際情勢が変化しての話。当時ハンガリーはドイツについていたが、彼の祖国ルーマニアは反ドイツのソ連についたため、彼は敵国人として捕らわれ、運搬列車に押し込まれてしまう。その貨車の中でユダヤ人の老人ラ…

今までの整形外科では扱えない痛み

仕事柄、普通の整形外科であまりうまくいかない患者さんが多い。レントゲン、CT、MRI、超音波診断、血液で問題がなく、あまり痛がればステロイドの注射しかないと言われ、それでもダメなら開ける(手術)と言われる。症状によっては開けなければどうにもならない方はいるが、開けずに何とか方法を探している患者は多い。そうなると試しに鍼灸でもとなる。我々の扱える範囲内であればいいが、当然手に追えない方もいる。そうな…

膝痛で来て血圧が下がった話

ある職人さんが遠方から膝痛で通っている。診ると変形はあるし、殆ど階段の上り下りが出来ないという。医者からはもっと酷くなったら人工関節と言われていて、本人は何とか避けたいという。まず中敷きを作って、脚の筋肉をほぐし、必要なところに鍼をやったが、中々痛みが良くならない。何か全身から治療のヒントがないかと思った診たら、甘い物取りすぎ(膵臓の反応点が硬い)を見つけた。話を聞いたら、職人さんがお客さんのお宅…

講演会と高血圧

これは以前、免疫で有名な安保徹教授から教えて戴いた話したが、「私などはしゃべる機会が多いが、どうも坐ってしゃべると話に迫力が出ない。立ってしゃべると気迫というか迫力が出る。その時の血圧がどれくらいか測ってみたら、最高血圧が180mmHgだった。やはり交感神経興奮というか、アドレナリンというか、このくらいの血圧がないと生徒に伝わらない。」以前、テレビで歌舞伎役者の血圧の話を聞いたことがあった。有名な…

悩み方にはコツがある-2

こういう仕事をしていると普段では中々逢えない方を治療することがある。 これは大分昔に起業家で有名な方から直接教えて戴いた話したが、「社員の話を聞いているとこいつは悩み方を知らないと思ってしまう。悩んでもどうにもならないものは悩むだけ無駄、悩むべき大事な事に気持ちを集中させれば良いのにポイントがずれている。悩み方にはコツがある。」 例えば私に置き換えると日本の政治をよくするとか、資本主義をどうすると…

騒がれても困るし騒がれなくても・・・

これは以前有名な女優さんから聞いた話したが、マウイ島に別荘を買ったときに、日本にいるとどのレストランに行っても「あ、○○さんだ。」と言われ気を使ったが、さすがにマウイ島ではそれがなく気が楽だと言う。しかしマウイ島に来るお客さんは数が限られ、時期も正月、ゴールデンウィーク、お盆だけでお店がつぶれてしまうと言う。それが残念だという話をしてくれた。オアフ島ならやはり、「あ、○○さんだ。」と言われてしまう…

腫瘍マーカーが上がってがんになったら治療しましょう

Bi-Digital O-Ring Testをやっていると早期のがんの発見から、腫瘍マーカー(がんになると血液中に出てくる物質を測る)を下げ、がんを暴れさせない工夫が沢山ある。しかし現実問題、病院での診察で、「少し腫瘍マーカーが上がり始めていますが、少し様子を診ましょう。がん化すれば手術します。」と言われると、「いえいえ、先生腫瘍マーカーを抑えるにはどうしたら良いかを教えて下さい。手術は避けたいで…

合わせ技1本

踊りをやっている方がきつい稽古で肩と脚を痛めた。いつものことなので鍼を打って2-3回の治療で良くなるだろうと思って診たら、劇的に良くなっている。何があったのか聞いたら、何もしていないという。そんなはずはないので前回の治療を思い出し、その後どういう生活をしたか聞いたら、前回の時に首のゆがみがあったので、マウスピースを調整したほうがいいという話と少し胃炎だったので、じゃ又薬をもらってという話をしたこと…

瞬間的に脚の筋肉痛を取る方法

常連さんが毎週末スキーで脚が硬くなっている。大会があるので瞬間的に脚の疲れを取る方法はないかという話になった。少し知恵を絞ってみたい。 1.ビタミンB1・12などを飲むか点滴 2.ビタミンCやEを使う 3.漢方薬の八味地黄丸 (下半身の血流剤)、芍薬甘草湯(痙攣止め) を使う 4.発汗 5.大量の細い鍼を使うか電気を流す 6.ステロイドを使う(医者に相談) 7.筋弛緩剤を使う(飲み薬でミオナールな…

リワークについて

仕事柄、鬱病の方は多い。その方達がある程度良くなっても社会復帰が難しい場合がある。リワークとは聞き慣れない言葉かもしれないが、鬱病の人が社会復帰するため、復職に向けたウォーミングアップを行うことをいう。 いきなり職場へ戻って働きはじめるのではなく、専門の公的機関や医療機関などに通い、オフィスに似た環境で実施されるさまざまな復職支援プログラムを通じて再発リスクを軽減させるのが目的。 http://w…

治療目的の違い

最近若い先生から、「治療技術や考え方などを指導して欲しい。」と言われしゃべっているうちに、ある事に気がついた。 それは「治療目的の違い」である。 わかりやすく言うと、腰が痛い患者に「痛みだけ取ればいいでしょう。」という考え方と、「今後腰も痛くならず病気を避けて、快適に過ごすにはどうしたらいいか。」という考え方である。 痛みだけ取ればいい場合は治療の目的は鎮痛なので、最終的に薬を使えば何とかなる。 …

今回はなぜか効かない眩暈(めまい)

常連さんが数年ぶりに眩暈(めまい)が酷いという。カルテをみたら2年前にも起こしていて、定番薬メリスロンで治まっている。メリスロンに関しては眩暈が起こってすぐ飲むと効くので、常に持っていると安心だと言っている。ハンドバッグはよく女性は変えてしまうので、小銭入れか財布に入れなさいといつも言っている。今回は飲まなかったのかと聞いたら、「日に3回3日間飲んで効かない。」と言う。身体のメンテは月に1度度定期…

老人性掻痒(そうよう)症

何となく難しそうな言葉だが「掻痒 そうよう」とは痒いということである。今日紹介で来た方は蕁麻疹が治らず、痒くて仕方がないという。近くの皮膚科の薬も効かず、健康食品や塗り薬をどうしたら良いかという。まず過去の薬を見ると、高血圧、心臓不整脈、糖尿病、前立腺肥大症、呼吸器疾患に不眠症と色々ある。投薬を一つずつ聞いていったら、去年の春はひどい咳で2ヶ月ほど苦しみ主治医ではない先生に漢方薬を出してもらったと…

インフルエンザと体調

常連さんがインフルエンザにかかり、治療を受けて熱は治まったが体調が戻らないという。何が戻らないのか聞いたら、朝は目覚めはいいが、何となく胃腸が動いていない。どこだかわからないが身体がだるいと言う。本人は、「熱が下がったということはウィルスがなくなったわけでしょう。どうして身体が元に戻らないのかわからない。」と言う。正確に言うとウィルスは減るだけだが、確かに熱の原因はウィルス感染、しかし熱が下がった…

上半身のすれ違い

常連さんが、「先生が葛根湯は上半身の血流剤(肩こり、頭痛、風邪、喉の痛み、耳の症状に効く)と言っていたので、胃と心臓にもいいですよね。」と言う。「え、そこには葛根湯は使わない。」と言うと、「でもへそから上は上半身ですよね。どうして駄目なんですか?」と聞いてきた。 これには理由があって葛根湯が上半身の血流剤という場合は心臟より上を指す。よく下半身の血流剤ということで八味地黄丸を使うがそれに対抗しての…

蜂窩織炎と点滴

紹介で膝痛が来た。脚を診ると普通の膝痛では熱を持たないところが熱い。すぐにこれは感染で蜂窩織炎を疑った。「医者に行って抗生剤をもっらてください。」と伝えたが、蜂窩織炎の詳しい説明はしなかった。その次に来たときに、「医者には行けなかった。」と言う。こういう場合は患部に鍼を打ったり、揉むと大変なことになるので、仕方がないので痛くない方だけ治療して、「必ずもらって下さい。出してもらえないときは氷で冷やし…