左の背中と感情

東洋医学では内蔵体壁反射と言って、内蔵の異変が体表に出るという考え方があります。
たとえば胃が悪い場合にお腹や背中の胃に関係するツボに反応が出るわけです。
我々はそのツボを刺激して、内蔵を治そうとしているわけです。
直接内蔵に鍼を打っているわけではありませんので、この反射が頼りで体表から内臓の治療が出来るのです。
時々仕事がきつくて、左の背中に反応が出る方がいますが、これは心臓の反応です。
正確には左肩甲骨の下の内側ですが、綺麗に反応は出ます。
では心臓が悪いのかと言っても、病院で異常が出る事は殆どありません。
この反応は自律神経の反応で、例えば学生時代に好きな子が近くを通っただけで、心臓がバクバクした記憶があると思いますが、交感神経の働きで、心臓が早く脈打つのです。
つまり緊張状態にあると自分の意志とは全く別に、勝手に身体が反応しているわけです。
仕事がらみで嫌な仕事、やりたくない仕事の時には交感神経が興奮しますので、左の背中に反応が綺麗に出るわけです。
この反応を見て、「本当はやりたくないでしょう。」と言うと、「どうしてわかるんですか?」となるわけです。
私はこの反応を「ヤダモン君」と呼んでいます。
お立場のある方はこの仕事がいやとは言ってられませんので、頻繁にヤダモン君がでます。
「またヤダモン君が出てますよ。」と言うと、「やっぱりね。身体は正直だよね。」となります。
気が重い時とそうでないときは、こんなに身体は違うのかと毎回感心しています。
結局、人の身体は感情で支配されていて、何をやるかで反応するのではなく、どういう気持ちでやるかで決まるのです。
心の持ちようでヤダモン君になってしまうこともあるわけです。
私などは同じ仕事をもう30年以上やっていて、ようやくどんな患者さんが来ても困らなくなり、今は道楽のような気持ちでやっていますのでヤダモン君はいません。
こんなに楽で楽しくていいのかなぁと、時々感じます。
ヤダモン君を背負っている方、お待ちしています。

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