鎮痛剤は病気を治していないという話

橈骨神経痛で通っている患者が極端に投薬を嫌がっている。「この神経痛は鎮痛剤では治らないことを知っている。医者から薬をもらってもそのまま捨てている。」と言う。気持ちは分からないでもないが、我々の立場からすると少し違う。鎮痛剤を使う目的は神経痛を治すためではない。身体が少しでも痛みを感じなければ快復力が働き、体力で治せるチャンスが増える。この方には次のような話をした。「例えばあなたが冬に風邪を引いて家に戻ったら家は隙間だらけで暖房はない。着る服も粗末で風呂も入れない。食事は冷めたスープだけで十分な食料はない状態で羽布団もない状態と、暖房はバッチリ効いていて服はホカホカ、風呂に入ってしっかり身体を温め、食事は熱いぐらいのスープと食べきれないほどの消化にいいものが並び羽布団はホカホカでは、風邪の治り方は違いませんか?」結局風邪でも何でも体力で治すのである。この話は環境論だが、良い環境を与えてあげると身体は力を発揮しやすいので治りやすくなる。薬が治すわけではない。この話をして拒否していた鎮痛剤を飲んだら嘘みたいに楽になったという。風邪の時も同じような話がある。風邪はウィルスで医者から出る薬は普通は抗生剤。抗生剤は菌には効くがウィルスには効かない。だから風邪薬を飲んでも治らないという。確かにそうだが、風邪の時はウィルスだけに感染しているわけではない。他の菌にも混合感染している。ウィルスに効かなくも抗生剤が何%かは有効だ。咳や発熱などの症状も楽になっているうちに体力を回復する。それで楽になるのである。ウィルス論だけで語れない。身体を診る場合は狭い範囲だけでなく、全体を診ないとこういう議論になってしまう。言っていることは間違ってはいないのだが、臨床では鎮痛剤はなくては困る。

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