予測できた開腹手術

常連さんの知り合いで70才女性の方が、悪性リンパ腫の治療を続けていて、ある日突然腹痛で診てもらったら腸閉塞でお腹を開けるしか手段がないところまで悪化していたという。話を詳しく聞くとこの方は抗がん剤をやっていて、かなり免疫状態が下がっていたという。最近何となく調子が悪いと言っていたらしく、便秘が続いていて吐くこともあったそうだが、特段気にしなかったという。そして突然の腹痛で内視鏡では治療できず、お腹を開けたという。この話を聞いてまず、抗がん剤をやっていると副作用で粘膜がやられたり骨髄に影響が出たりするので、何とか腸内環境を維持しようと乳酸菌の大量療法が頭に浮かぶ。そして免疫維持のためにもお通じはとても大事なので、吐くまで我慢してしまったというのは感心しない。当院に来て頂いていれば吐く前に、「そんなに便秘が続いたらダメです。胃腸科の先生に高圧浣腸でもやってもらって下さい。」と言っていたと思う。それでお通じが何とかなっていれば開腹まではいかなかったと思う。これはよく病院で交わされる会話だが、「先生、私はリウマチで痛みを止めるために強い薬を飲んでいます。しかし最近胃が辛く、胃を取らなくてはならなくなりました。」「そうですね。あれは強い薬ですから多少胃がやられても仕方がない部分はあります。副作用のない薬はないですからね。」リウマチの痛みを止めるのは大変で、胃ぐらい犠牲になっても仕方がないという話である。こういう会話は良く交わされているが、こちらから見ると、「副作用0とは言いませんが、ある程度胃に負担がかかるとわかっているなら、その注意事項とか何か処方をどうしてしてくれないのですか?」と言いたくなってしまう。おそらくそういう場合は、「全員の胃に負担がかかるわけではありません。かかる方もいるわけです。」と答えると思う。長年この業界にいるが、ほんの少しの親切心と親心で、もっと快適に患者さんが過ごせるのではないかと思ってしまう。

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