最近患者さんから、「先生の『手術は成功』の記事を読みました。成功したのにどうして問題が起こるのですか?」という質問があった。これを説明するのによくテレビに出ている脳外のスーパードクター福島孝徳先生の話が一番わかりやすいと思う。毎回番組の中で、「あ、こんな所に神経が入り込んでいる。」「あり、腫瘍が出てこない。」「あれ、こんな所に血管が絡んでいる。」「膜が硬くて開けられない。」と正直な感想が全部放送されてしまう。例えば腰の手術では患部に到達するまで切って開けるわけだが、術前のCT、MRI、エコーでわからないことが沢山ある。開けてみて、前述の神経、腫瘍、血管、膜などがこんなになっていたんだということは多々ある。以前、病院勤務時代に手の腱を切った患者さんが医者に、「少し開けて繋ぐだけだからすぐ終わる。」と言われて開けたけど、切れた側の腱が何処に行ったか全くわからない。本来なら2-3cm切れば良かったのに、最終的に腱を探し20cmほど切って繋いだ。これには患者さんは怒りは言葉に出さないものの、不納得の顔をいつもしていた。よく学会の懇親会で外科の先生から苦労話を聞くことがあるが、驚くような内容ばかりである。聞けば聞くほど、「それはどうにもならないですね。」というばかりの話で、先生方の苦労をお察しする。「手術は成功しました。」と先生は簡単に言葉では言うが、そこに至るまでの見えない苦労話はしないものである。すべての手術が予想したとおりで問題がなければ良いが、身体の中で何が起こっているのかは開けないとわからない。そんな背景があるので、手術は成功したといっても、色々と起こるのである。
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