瞬発力と考え方

今日紹介できた方は見るからに筋肉質で、ボディビルでもやっていたのではと思う方だった。瞬発力が抜群で、学生時代何をやっていたのか聞いたら、「少林寺、空手、キックボクシング」と言う。「マラソンは出来なかったでしょう。」と聞いたら、「苦手。」と言う。この瞬発力、元気なのはいいのだが、どうしても「我慢強い」「弱音を吐かない」など、当院の「我慢弱い人間を作る」「病気は仰山にしろ」とは逆の生き方である。瞬発力しかないから考え方が、「すぐに決めないと・・・。」とか「今がすべて」となってしまう。マラソンでもやっていれば、「力配分」や「時を待つ」、「力を押さえて耐える」など考えるが、瞬発力だけの方にはこういう発想がない。だから怪我をしても「やがて治るから今頑張れば・・・。」となり、様子を見ようとしない。当院に来るのも相当悪化してからである。歯の痛みに耐えてどうにもならなくなって歯医者に行くのと同じである。殆どは筋肉痛だから治すのは簡単であるが、その方の考え方を治すのは大変である。今までの考え方でいくとどうなるかを説明して、限界になってくる状況から予防にシフトとしなければならない。経験上、瞬発の方にこの考え方を理解して頂くのに10年近くかかる。2-3年で、「今までより辛くないときに来ました。」と言い、7-8年で、「痛くないけど来ました。」言う。10年経つと、「明日○○があるから予防で来ました。」となる。筋肉痛を治すより何百倍も時間がかかる。治療で一番難しいのはこの考え方を理解して頂くことかもしれない。

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