抗菌抗菌と言い過ぎ

以前、理化学研究所免疫・アレルギー科学総合研究センターの谷口克センター長のご発表で「子供を花粉症にしないための9カ条」を紹介した。

「子供を花粉症にしないための9カ条」

1.生後早期にBCGを接種させる
2.幼児期からヨーグルトなど乳酸菌飲食物を摂取させる
3.小児期にはなるべく抗生物質を使わない
4.猫、犬を家の中で飼育する
5.早期に託児所などに預け、細菌感染の機会を増やす
6.適度に不衛生な環境を維持する
7.狭い家で、子だくさんの状態で育てる
8.農家で育てる
9.手や顔を洗う回数を少なくする

最近はテレビでも広告でもやたらと、「抗菌・抗菌」と言っている。
我々から見ると無菌で生まれてくる赤ちゃんは、なんでもかんでも口に入れ、そこらじゅうをなめて回し、色々な菌を体に取り込み腸内細菌を増やし、免疫を上げようとしている。
「3秒ルール」と言って、食べ物が床に落ちても3秒以内に拾えばばい菌は大丈夫だそうだが、ゆっくり拾ってもらってもいいと思ってしまう。
スウェーデンの研究グループでは「手洗いよりも細菌を減らす効果が高い食洗機を使っている家庭の子供は、アレルギー発症リスクが2倍になる」という報告や、「子供が乳児期からペットを飼っていた家庭は、まったくペットに触れていなかった家庭に比べ、アレルギー疾患の発症が約16%低い」というデータもある。
日本の国立成育医療研究センターによる研究でも、2歳までに一回でも抗菌薬を使用したことがある子供は、5歳の時点で気管支ぜんそくになっているオッズ比(ある事象の起こりやすさを2つの群で比較して示す統計学的な尺度である)が1・72、アトピー性皮膚炎が1・40、アレルギー性鼻炎が1・65といずれも高かった。2歳までに抗菌薬を使って腸内細菌が乱れたことが、アレルギー疾患の発症に影響した可能性が指摘されている。
子育てでもはじめの子供の時は哺乳瓶を毎回熱湯消毒していたが、2人目3人目になると消毒など忘れ、哺乳瓶は床に落ちたままである。ではそういう哺乳瓶で育った子に問題が起こるかと言えばそうでもない。
電車のつり革やエスカレーターのベルトに、「抗菌」の文字を見るたびに、アレルギーやアトピー、鬱病は減らないだろうなぁと感じている。

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