脳の中にもう一つの身体の地図がある?

長年仕事をしていると患者さんから、「ここが痛いのでここに正確に鍼を打って欲しい。」と言われ打つと、「違う、そこではない。」と言わる事がよくある。ではどうすれば良いのか色々試してみると、その場所からではなく、少し違う所からある角度で打つと、「そこそこ。」と言われることが多い。これは長年の経験があるから出来ることであるが、何度となくこういう経験をしていると、「脳の中にもう一つの身体の地図がある?」のではないかと思ってしまう。その脳の中の身体の地図に正確に刺激を与えられた時だけ、患者は「そこそこ。」と言うのではないだろうか。もっと大脳生理学が発達すれば、そういうことも解明されるだろうが、昔から名人と言われる先生方の治療を見ていると、何時も何となくピントがずれているように感じていた。自分の方が余程正確に鍼を打てるのにと思っていたが、それではおそらく脳の中の地図に刺激が行かないのではないだろうか。名人はその地図のことが何となく分かっていて、そこに刺激をする方法を探っておられたのではないだろうかと思うようになった。何事も本質の理解には時間がかかるものだが、こういう考え方が出来るようになってから、今までより高い確率で患者から、「そこそこ。」と言われるようになった。

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