胃カメラ体験記

今までは区民検診で時々胃のバリウム検査をやっていたが、最近はバリウムを飲んだあとで宇宙遊泳させられたり、発泡剤を飲んだ後にゲップを我慢してくださいと言われ、「はい。」と返事をした途端ゲップをしてしまい、それを2回やったらレントゲン技師に凄い嫌な顔をされたりで、これからは胃カメラに変えようと思った。
近医で上手な先生に電話をしたら、「新型コロナウィルスの影響で今はダメ。あとにして。」と言われ、そのままになっていた。
たまたま新しく出来た消化器内科を家内が見つけ、良さそうだったので色々と調べたら、知り合いの医者が非常勤でやっていたので話を聞いたら、「あそこは大丈夫。」と言うので今回お世話になった。
今まで2回ほど胃カメラは経験しているが、当時は麻酔などしなかった。
前回の検査が思いの他辛く、検査している医者の顔を見たらまだ20代で、あまりに若かったのですっかり懲りてしまったが、今度の所は麻酔下でやってくれるというので、十数年ぶりの胃カメラである。
この胃カメラだが古代ギリシア・ローマ時代に、「人間の身体のなかを何らかの器具を使ってのぞいてみたい」と考え、ポンペイの遺跡からも内視鏡の原型のようなものが見つかっているという。
本格的に器具が出来たのは1800年代でドイツの医師クスマウルが金属管を使い、大道芸人に剣を飲ませるようにして実験をした。
色々とやっていくうちにまっすぐの管だと困るので曲がらないかとなり、胃の中は暗いから灯りやカメラまでつくようになった歴史がある。
日本では戦後、東大の先生から「患者の胃のなかを写して見るカメラをつくってほしい」とオリンパスに依頼があった。
オリンパスはカメラ部門は駄目になっても、内視鏡は独占状態である。
確か初めての実験の時にフィルムを入れ忘れたというエピソートがあったという。
そして初めての撮影で見事な胃潰瘍を映し出せたという。
内視鏡も本来は口から入れるタイプだが、吐き気を出さないために鼻から入れる方法も良くやられるようになってきた。
鼻から入れるために多少細い口径の内視鏡を使うのだが、画質の良さや操作性は太いものにはかなわない。
最近は麻酔下での内視鏡がよくやられていて、検査を受けた方から、「こんなに気持ちが良いのなら来月又受けたい。」と言わせるほど楽だと聞く。
私自身、今回初めて麻酔下でやったが腕に注射を打たれ、1分も起きていなかったのではないだろうか。
気がついたら別室のソファで寝ていた。
看護師さんに起こされ、「あ、運んで頂いてすいません。」と言ったら、「自分で移動されましたよ。」と言われ、全く記憶がなかったので、耳を疑ってしまった。
その後少し休ませてもらったが、何とも言えない心地良い眠りの深さに、「患者が言っていたのはこのことか。」と納得した。
これを味わうともう麻酔なしには戻れない。
検査をする医者からすると、麻酔の危険性もあるというだろうが、患者が麻酔を選んでしまうだろう。
技術の進歩と共に検査が楽になり、やがては朝起きた段階で簡単なドックは終わっているようになるだろう。
「あなたが寝ている間に胃を調べましたが、少し胃炎が出来ています。朝食後、指定の薬を飲んで下さい。3日後にまた調べます。」
「昨日のゴルフで股関節の腱に一部断裂が起こっています。タクシーを手配しておきました。」
「ここ1週間の連続企画会議で鬱状態が少し出ています。夜の会議をキャンセルして、昼は頭の血行不良を上げるものをレストランに注文しておきましたから食べて下さい。」
こんな時代は近いと思う。

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