試験問題を作る人の心理

受験生が何人か来ていて、昔を思い出し話をすることがある。友人で頭の良いのがいて試験問題を見ると、「この問題のひねり方は弱い。もっとここを突いてくれば皆答えられないのに・・・」といつも、出題者の気持ちになって解説してくれた。話を聞きながら、「問題を作る人はそういう気持ちか」と感心していた。例えば歴史の問題でも、簡単に戦争が起こって解決したでは問題にならない。何故か途中で状況が変わり、予想外のことが起こり、複雑化しないとまず研究者が手をつけない。研究者は常に、「どうしてこういう事が起こったのだろう?」という視点で研究課題を見つけて深掘りする。そういう人が、「ここの所を問題にすれば、深い知識がない人はひっかかるだろう」と思って問題にするはずである。だから戦争の歴史でもこじれた事件が問題になりやすい。我々も新人に対して例えば解剖の問題を出そうとすれば、構造が簡単な太腿より、複雑に神経血管筋肉が入り組んでいる頚の問題の方が作りやすい。そういう出題者の目を持つと、山は張れとは言わないが、ある程度当たりはつけられるのではないだろうか。フランスならルイ14世・16世、マリー・アントワネットやフランス革命、ドイツならナチの台頭やヒットラーそしてベルリンの壁崩壊、中国なら毛沢東の文化大革命、鄧小平の天安門事件と経済政策、習近平の一帯一路、アメリカなら独立戦争、南北戦争や公民権運動そして冷戦終結からテロとの戦い、日本なら武家社会から戦国時代、明治維新と太平洋戦争と大きな歴史的うねりが問題になるのは間違いない。また現在起こっている問題も少し生徒に理解してもらおうという心理になるはずである。そんな話をしたら、「中国出そうなんですよ」と言う。問題を解くのも出題者の心理が分かればこんなに楽なことはない。

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