昔に比べて医療が細分化されている。関節のことなら昔は整形外科で良かったが、手の外科・足の外科が出て、すこし難しい患者だと整形からそちらに回される。新型コロナウィルスの影響で我々も学会で集まれなくなり、ズームで講義を聞いていたが、益々細分化の流れは強くなってきている。ではこのまま進むとどうなってしまうのだろうか?おそらく、「左眼専門医」が出てくる。「右眼?私は左眼専門医だから、右眼のことはわかりませんよ。右眼専門医に行って下さい。」と嘘みたいな話が現実化しそうである。こうなると「左耳専門」手の外科ではなく、「指の外科」そして、「右手の人差し指専門」が出てくる。その後は「右手の人差し指の第2関節専門」となるだろう。この流れは止まらないが、そういう時に求められるのが、「総合診療」である。身体全体を診てくれる先生の存在がとても大事である。この「細分化」と「総合」は車の両輪でなくてはならない。細分化だけでは医療は成り立たない。昔の医者は、「頭のてっぺんからつま先まで」診てくれた。余程の産婦人科以外はかかりつけの先生に何でも相談した。それで何とかなっていたものである。昔の比べ病気が複雑になれば成る程、細分化は必要だが、全身をちゃんと診る医療を忘れてしまうと、「右眼?私は左眼専門医だから、右眼のことはわかりませんよ。」となってしまう。この話は今は笑い話で済むが、そんなに遠くない将来、この話を笑えなくなる時代は必ず来る。
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