これはとても印象に残っているご婦人だが、こちらが膝を治そうと思うと、「先生、そんなに熱心にやらなくてもいい」と言われてしまった。変なことを言うなぁと思いながら色々と話を聞いたら、理由が分かった。「私が調子良さそうにしていると、娘からこき使われてしまう。痛がっていると医者に行けと言われる。医者に行っているけど良くならないという状況がいい。膝の痛みが取れてスタスタ歩いていれば、『何だ調子いいんだ。だったら○○をお願い。』となってしまうし、治療してるけど良くならなければ、『お母さんも年だからしょうがないわよね』で終わる。だからこれが一番平和。まめに通うけど、現状維持ぐらいで良くなったら大変。」と言われて、これには唸ってしまった。こちらは治療家だから、「いかに早く、鮮やかに」しか考えていないが、世の中には色々な状況の方がいることを学んだ。だから、「何でも痛みを取れば良いというものではない」のである。また逆に痛みの取りすぎで患者がはしゃぎすぎて、悪化するケースも経験した。人には器と環境があり、そこを見極めるのも我々の仕事である。
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