どうして痛い足なのに重点的にやっていただけないのですか?

常連さんが山登りの後に来て脚を治療していたら、「触ってもらうと右脚より左脚が痛いのに、どうして治療時間が左右でそんなにに変わらないのですか?」と言う。さすが常連さんの質問はするどい。「理由は簡単です。思いのほか登山の脚への影響はあまりありません。右脚は大腿四頭筋(太腿の前の筋肉)の表面はいいのですが、深いところにしこりがあります。これは治療しなくてはダメです。左脚は痛がっていますがこれは登山ではなく胃炎の反応です。だから左脚だけいくらやっても楽になりません。背中やお腹を治さなくてはならないので、脚の治療時間をそこそこにしたわけです。確かに左は痛いのですからもうすこしという気持ちは分かりますが問題は解決しません。見切り千両と方向転換が必要です。我々は常に触ると色々なことを感じます。その都度方針を立て『あうしよう、こうしょう、ここが○○だから□□から攻めよう。』と考えながらやっています。以前、患者さんが『先生、何を考えながらやっているか、しゃべって。』と言われてやった事がありましたが、『へ~、そんな事考えながらやっているんだ。知らなかった。』と言っていました。ぼくの師匠は消化器の医者でがんばかり治療していますが、ある時先生がちょっとした一言を言われ、それを聞いた途端、先生はそんな複雑なことまで考え、配慮しながら治療されているんだとビックリした事がありました。何事も超一流となると見えないところの心の働きというか悟り、気づきが凄いものです。そこを悟られないようにするのもまたプロだと思います。表面に見えるのはほんの少し、氷山の一角で見えないところの努力や配慮で結果が全く違うと思っています。」と言ったら、「なるほどね。」と言っていた。

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