先生は患者がどれだけ痛がっているかわかっているのですか?

常連さんが、「先生は患者がどれだけ痛がっているかわかっているのですか?」と聞いてきた。もちろん人の身体なので全てわかるわけではない。しかし今まで延べ人数で何万人治療したかわからないが、「おそらくこの筋肉の状態なら、このくらいの刺激は耐えられるであろう」は想像がつく。当院は「早く鮮やかに治す」事をモットーにしているので、基本はその場で治す事を考えているが、普通は5回かかる治療なら3回でと考えている。そうなるとどうしても刺激を入れる深さや量が増える。患者がそれを痛がるわけである。しかし我々から診たら、治療が終わった後にもその先生の刺激が身体と心に残らないと意味がない。それを以前人生の師匠から「余情残心 よじょうざんしん」と教えて戴いた。人気のない先生は治療を受けている間だけ気持ちよくて先生の手が離れたら、患者の心に全く残らない。上手い先生というのは、治療を受けた後も患者の身体と心に残る。だから思い出してまたかかりたくなる。修業時代、先輩に、「稽古をつけてください」と言ったら、「お前なんかその辺の柱でも押していろ」と言われ、柱を押していたら、「そこに寝ろ」と言われほんの数秒だけ足の裏を押して戴いた。その感覚は未だに残っている。何とも心に刺さる刺激で、どういう技術なのかは未だにわからないが、こんなに心に残るものなのかと驚いた。これは中々教え事にならない。おそらくこの余情残心は歌や踊り、絵の世界でも同じであろう。見た瞬間、聞いた瞬間に心を掴まれてしまう。お陰様で当院も何とか続いているが、この初めの質問に対しては、「痛いのは理解しています。治療の目的は余情残心であとあとまで今回の治療が皆さんの心と身体に残り、忘れられない治療だったと言って頂ける事を目指しています。」と答えている。

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