院内再開裏話

4月7日の緊急事態宣言で当院も閉院を決めたが、5月末までの延長でこのまま閉院を続けるか、再開か悩んでいた。こんな時は徹底的に勉強して、新型コロナウィルスの本質をみる以外にない。幸い閉院中だったので、長い時間調べ尽くした。そこでわかったことはテレビで有名な武田邦彦先生の出しておられた情報である。武田先生はアビガンを開発された白木公康教授の論文を読まれ、「今回の新型コロナウィルスは人から人ヘの感染よりも、人から物そして人への感染である。だから3密よりも接触感染である。」と発言された。気になって論文を読んでみると、飛沫感染・空気感染については「密室におけるインフルエンザの集団感染例としては,空調が3時間停止した飛行機内で,1名の患者から37名に感染している。多くの人が密集し呼気のエアロゾルが乾燥しない空間では,感染者がいると感染は避けがたく,多数の感染者が発生する。」と書かれており、この飛沫だけが原因なら満員電車などでは感染が爆発してしまう。しかしそうは報告されていない。接触感染については「SARSが香港のホテルで集団発生した事例では,感染者が宿泊した部屋で使用した雑巾で,同じ階の各部屋を掃除したとされる。その階では,掃除された部屋内に付着していたウィルスで物を介した感染(fomite transmission)が起こり,感染が各国の宿泊者に拡大したとされる。このようにSARSコロナウィルスでは,間質性肺炎から気道に出たウィルスが咳などにより放出されただけでなく,感染者から出た咳や痰,下痢便など,ウィルス量が多い排泄物が付着した物が,見かけ上乾燥していても感染源となった。COVID-19も,物を介する感染を防ぐためには,「顔に手をもっていかない(特に鏡の前で無意識に顔面や毛髪を触ることに注意)」「手の消毒や手洗い」が重要と思われる。インフルエンザと同様の飛沫感染については,先に述べたように,咳やくしゃみの飛沫だけでなく,呼気の87%を占める1μm以下のエアロゾルも感染性を有すると考えられるが,コロナウィルスは,細胞中で産生されるウィルス量がインフルエンザウィルスの約100分の1であることから,インフルエンザほど感染能力は強くないと推定される。」と書かれていた。新型コロナウィルスはSARSの仲間である。こちらを注目すべきである。ニューヨークで院内感染が拡がった時に一部の医者が、「これは飛沫というより接触でうつるのでは?」  と推測して、手指消毒を徹底したら、院内感染が激減したという。ニューヨーカーも「アメリカではマスクはする習慣はないが、新型コロナウィルスは接触だから手で顔を触らないようにマスクをして。」としきりに言われ始めた。日本でも同じ事が言われ始め、感染の専門家も頻繁な手指消毒を指導するようになっていた。私もブログで、「手指消毒について」「どうもまず疑う性格が治らない」「新型コロナウィルス追加注意事項」で注意喚起をした。ここまでウィルスの本質がわかってくると打つ手は簡単である。徹底した手指消毒である。そのために院内治療では「防護帽」「マスク」「手袋」「白衣の消毒」、首や頭の治療時「フェイスガード」を掲げ、出張治療では患者さんのご要望にお応えする形を取った。もちろん眼に見えないウィルスだから100%という完全な形はない。しかし現段階で出来る最善策はとったと思う。本来であれば「防護服」も必要かもしれないが、実際着て仕事をしてみたら、体温が急上昇してさすがに仕事にならない。ICUなどで防護服を着ながら、重篤患者を診ている医療関係者には改めて頭が下がる。今後も第2波が冬には来るだろうが、それまでにいかに予防に努めるかは師匠から教えて戴いた。再開を機に、細かい注意事項や今出来ることなどを指導しながら、治療にあたりたいと思う。

■白木公康教授の論文より引用
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=14278

 

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