キーワード がん

人間万事塞翁が馬

学会では先輩から色々とアドバイスを頂く。特にお酒が入った懇親会では、「田中、少し俺の話を聞け。」となる。以前頂いたアドバイスで、「例えば患者が肩が痛くて注射を打って楽になったとする。君はどうする?」患者に、「よかったですね、嬉しいですよ。」と言います。「ではその後痛みが出たら、この間の満面の笑みが消え、悲しい顔をするわけ?」「え、まあ・・・・・。」「例えばがんの患者で血液データを医者が黙って暗い顔…

医者と喧嘩

仕事柄、患者が医者と喧嘩したくとも出来ないという話をよく聞く。 「今診てもらっている先生はパソコンばかりでこっちの顔を全く見ない。」 「膝が痛いと言っているのに全く触らないで、レントゲンとMRIだけで判断している。」 「なじみの歯医者がインプラントを入れないと診てくれない。」 「かかりつけの歯医者に治療代を全額支払ってしまったが、途中から気が変わって返金に応じてくれるか不安だ。」 「様子を見ましょ…

そんなに厳しく言われなかった

常連さんの場合、血液や他の検査データなどはうちでも管理している。時々データを見て、「あれ、この数字上がっているけど医者から注意しなさいと言われたでしょう。」と言うと、「言われたけど、少し注意すればいい程度しか言われていない。」「そうなの。でも数字から見るとちょっと本格的に取り組まないと良くないけど・・・。」と言うと、「医者からそんなに厳しくは言われたなかった。」と言う。この医者の言葉というのは何と…

極めたい患者と楽になれば良い患者

Bi-Digital O-Ring Testをやっているとどうしても原因を調べて欲しいという患者は多い。レントゲン、CT、MRI、超音波を撮っても、血液を調べても原因らしきものが何も出ないと納得が出来ないという。確かにそうではあるが、医療者側も原因がわかってやっているケースは案外と少ない。発熱や痛み、内臓の機能低下、感染、がんに至るまで、原因不明のものは意外と多い。だから出ている症状を鎮めて様子を…

老いと寺子屋

最近仕事をしていてつくづく思うことは、「自分のやっていることは寺子屋だなぁ。」ということである。 何を教えているかと言えば、「老い」である。 長いこと仕事をしてきてわかったことは、「人の老いは皆同じパターン」ということである。 20歳までの成長期は殆ど病気もせず元気でいいが、33歳ぐらいから明確に身体は変化し始める。 まず問題なのが体重増加、酷い方だと20歳より15kg増える。 そうなると坐骨神経…

ウェラー・ザン・ウェル

Weller Than Wellとは誰言うとなく伝えられてきた言葉で、直訳すれば、「健康なときより、いっそう健康」という意味である。 元NHKでがん患者の川竹文夫さんがNPO法人ガンの患者学研究所を立ち上げた。 そして川竹さんがこの言葉を次の様に解釈すると言っている。 「自助努力によってガンを治した人は、ガンになる以前にも増して、心身共に、はるかに健康で幸せな人生を送ることができる」 この患者会は…

治療目的の違い

最近若い先生から、「治療技術や考え方などを指導して欲しい。」と言われしゃべっているうちに、ある事に気がついた。 それは「治療目的の違い」である。 わかりやすく言うと、腰が痛い患者に「痛みだけ取ればいいでしょう。」という考え方と、「今後腰も痛くならず病気を避けて、快適に過ごすにはどうしたらいいか。」という考え方である。 痛みだけ取ればいい場合は治療の目的は鎮痛なので、最終的に薬を使えば何とかなる。 …

医学は科学、医療は物語

「医学は科学、医療は物語」この言葉はがんのセミナーで患者さんから教わった。 病気を研究するのが医学なので、がんなどはどうやって殺すか取るか、叩くかという話になる。 患者の死は医学においては敗北である。 だから新しい治療法が出るまで延命すれば、負けていないことになる。 よく聞く話で抗がん剤を使い続け、がんは大きくならなかったが、免疫不全の肺炎で亡くなれば負けたことにはならない。 そしてがんが大きくな…

大腸内視鏡で絶好腸

始めて大腸内視鏡を受けた方がその後腸の調子が良いという。どうしてこうなるのですかと聞くので、「理由は2つ3つあります。まず医者が内視鏡を入れながら少し曲がったりねじれたところは治してくれる先生がいます。次に検査の前に下剤をかけますが、腸が空っぽになるわけです。今まで少し便があったのが空っぽ、そして今までいた腸内細菌もスッキリそしてリセット。殆どの方は腸の空っぽを体験したことはありません。昔腸を洗う…

体温と免疫

最近はがんの患者さんが多い。 身体を診ていていつも感じることは低体温である。 抗がん剤などやってしまうともっと下がる。 特に手を触ったときの独特のヒヤッとした感じは忘れられない。 よく体温の話が出るががん細胞が分裂しやすい温度は35℃である。 昔は低体温の子供は殆どいなかったが、最近は多い。 子供は風の子と言うが、冬でも半袖短パンでお祭りには男だけ寒中水泳や裸祭をやる。 これはすべて精子の細胞分裂…

希望

Bi-Digital O-Ring Testを長年やっているとがんの患者さんは多い。 ある患者さんががん専門病院に行ったら、次のように言われたという。 「あなたの○○がんは△△の薬をやれば2ヶ月延命する。または△△の抗がん剤を足せば7ヶ月延命した症例もあった。」 と薬と延命の話ししか出なかったという。 「私が医者に聞きたいのはそれ以外で可能性のある治療法は、専門家の立場から何かないのかということだ…

体重増加と母の手作り

40代の女性が最近若い頃に比べて10kg太ったので、マクロビの講習を受けて、「砂糖は麻薬」「牛乳と乳がん」「トランス脂肪酸(アメリカでは全面禁止)」の話など色々と聞いてきて、そんなものかと思っていたという。しかしうちに来て又同じ話をされたので、やはりそういうものなんだなぁと思ったという。この方は二十歳ぐらいまでコーラやマック、市販のポテトチップを食べたことがなく、何かあるとお母さんが作ってくれたと…

閉経と解放

常連さんが閉経して、もう女ではなくなったのかしらと言う。この閉経に関しては以前師匠から、「閉経は女性にとって解放である。」と教えていただいた。一般的に女性の生理は12才から48才までの36年間である。多少の前後はあるにせよ、50才に近づくと女性の症状は増える。その中で圧倒的に多いのが不眠である。その次にホットフラッシュ、関節の痛み、だるさ等々、不定愁訴のオンパレードである。極端な女性ホルモン低下な…

長引く首の違和感

常連さんが首の違和感がなかなか取れないという。もう数ヶ月になるのですこし悪い話をした。「最悪のことを言うと以前にあなたはがんをやっているので、中咽頭がんなどを疑います。中咽頭がんは少し喉のリンパが腫れるぐらいで殆ど見つかることはありません。患者さんで見つかったんですと言われれば『とても運が良いですね。』と言います。念のため内視鏡で診て頂くといいと思います。次に首のMRI、ヘルニアなど出るかも知れま…

今回の国際学会で学んだこと

9月21日(金)~23日(日)までスロベニアでECIMの国際学会があった。 これは遡ること4年前に、私の師匠の下津浦先生の所に初代スロベニアのLojze Peterle首相が訪ねてきて、「今ヨーロッパは医療崩壊しつつあるという状況ではない。もう崩壊している。例えば抗がん剤だが、高いものは1ヶ月2000万円(現在は月に5000万円するものもある。)する。それで治れば良いが、亡くなる方は多い。だから世…

仕事で胃が痛いとき

中学生から診ている子が、社会に出て不動産の仕事をしている。月末になると独特の雰囲気で皆ピリピリして胃が痛くなると言う。酷いときは2日ほど食事が喉を通らないという。4月入社で5・6・7・8月末と4回も月末を体験したのだから少しは慣れたと思うのだが、本人は相変わらず辛いという。こんな時は、「昔から『馬人参』と言って、何かご褒美を考えるといい。この月末が終わったら鰻だとか、スーツを買うとか、旅行に行くと…

脳腫瘍の講義を聞いて

Bi-Digital O-Ring Testをやっているとがんの患者さんは多い。 正しい知識を得ようと色々ながんのセミナーに出て感じることがある。 それは、「時代の経過と共に加速度的に医療が変わる」という現実である。 昨日も脳腫瘍の講義を聞きながら挨拶された先生が、 「我々が医学部の学生の時には脳腫瘍は切って治れば良いが、悪性度の高いものは諦めた。しかし今は全く違う。現代からその当時を見たら極めて…

治りにくい皮膚病について

患者さんの中には皮膚病が治らない方が結構いる。一番悪いパターンが薬を飲んだり塗ったりすると良くなるが、その後必ず再発するケースである。これでは臭い物に蓋をしただけで全く治療になっていない。薬の種類を変えていく度にどうも効きが悪くなる話をよく聞く。では何処から手をつければ良いのだろうか。少し列記したい。 まずは鼻炎-EAT(Bスポット療法)(上咽頭炎)で鼻を治す。 歯周病や歯の詰め物-重金属沈着を調…

咳治療の最後の砦「お灸」

季節柄、夏風邪なのか喉の痛みと咳の方がよく来る。症状が軽ければ売薬(葛根湯やコンタック)でいいが、こじらして喉の痛みが取れないとなると駆風解毒湯や医者に行ってるゴールなどを塗ってもらわないといけない。咳は軽ければ龍角散やベポラップ、乾布摩擦などがいいが、酷くなれば医者に行って抗生剤やメジコンなどの咳止めをもらう。それでもだめならリンコデと言って、リン酸コデインという鎮咳薬が出される。それでも止まら…

人は意識で死ねる

以前、読んだ本の中に戦争時代の捕虜の話があった。 捕まった捕虜は目隠しをされて、腕に注射針を刺されこう言われる。 「今刺した注射針で少しずつあなたの血液を抜いていく。音が聞こえるだろう。やがてあなたは死を迎える。」 そして段々音が聞こえる。 「ポタン、ポタン、ポタン・・・・・。」 そうすると殆どの捕虜は恐怖のあまり死んでしまうと言う。 しかし実際は注射針は刺しただけで、一切出血させていないという。…