運命を分けた脳梗塞患者の話

病院勤務時代に2人の患者さんが脳梗塞を患った。殆ど同じ時期に発症して程度は同じ、70代ぐらいの男女で年齢もほぼ同じ。違うのは男性はリハビリをしながら、「どうせ数年かけて良くなったとしても、その頃には死んでしまう。やっても無駄。」と言い、女性は、「孫の面倒は私がみなければいけない。良くならないと困る。」と言っていた。男性は薬をもらう為だけに月に一度来院してリハビリは10分程度。女性は毎日、雨の日でも通い、リハビリは15分だが待合室でも手を動かしている。この2人が3年後には全く別の人生になってしまった。男性は相変わらず車椅子で奥様に色々と指示を出してやってもらっている。トイレや風呂は自分で出来ず、着替えや食事も介助をつけている。一方女性は歩くことは何も不自由はなく、多少杖を使ったり後ろから見ると完全に左右対象ではないが、数時間平気で歩ける。自分のことはすべてできて、孫の面倒も見られる。そして相変わらず通院してリハビリに汗をかいている。もっと良くなりたい一心である。発症したときのほんの心持ちの差が、ここまで差をつけるのかを見せて頂いた。このことがきっかけになって、どんな状況でも決して諦めない心が芽生えた気がする。

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