病気は科学

人は具合が悪くなると色々と犯人を捜す。「この腰痛は昨日あの人に悪口を言われたからだ。」「何も腰に悪い事をしていないのに、痛みが出るのはおかしい。」などと患者は色々と考える。それも想像力がとても豊かで、時にはご自分の持っている医学知識を総動員していろいろな物をくっつけて珍説を伺う事もある。しかしどんな病気も明確に原因があり、現代医学で解けない問題(遺伝子や未知のウィルス)であっても、全て原因と結果は正しく反応している。時々腰痛の人で、「腰椎椎間板ヘルニアで神経が圧迫されて炎症があると思いますよ。」と言うと、「最近は全然無理をしていないのに・・」と言われ、「今までは?」と聞くと、「それは多少は・・・」と言う。「その時に痛めたままで治っていませんよ。」と言うと「こんなに安静にしているのに・・・」と言われてしまう。身体の中には2人いて、「本人の気持ち」と「身体の本音」である。本人がいくら無理をしていないと言っても、身体の本音が、「何十年も負担をかけ続け、メンテしなければこうなっても当然でしょう。」と言って、症状を必ず出す。本人は昔の事など覚えていないから、「どうして楽にならないのかしら」しか言わない。無理をしていないのに腰が痛ければ、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症を疑う。それ以外にすこし難しい病気もあるが、大抵はこの2つである。そして適切な治療をしなければ炎症は治まらない。安静にしてもダメである。これは全て科学の話である。病状を正しく判定して、適切な治療。これ以外にない。患者の感情や気持ちを入れると色々と話が曲がってしまう。「病気は科学で治す」が基本で、もちろんそれで割り切れない病気がある事も事実だが、まずはここを外してはいけない。腰痛に関して昔は病院の治療成績はあまりよくはなかったが、最近の検査と治療成績は目を見張るものがある。年配の方で「坐骨神経痛は病院で治らないから鍼灸」と思っている方は多いが、最近の整形外科の進歩は凄いものがある。まずはちゃんと調べて、病院で治りきらないものに対して鍼灸はとてもお薦めである。

image_print印刷する